【午前】
早春の安曇野の朝は、こんな清々しい光景から始まりました。
爽やかな澄んだ空気に誘われてか、エコツアーの20分前にはこうして畑の前に三々五々集まり、向かいの山並みを眺めていました。
7時。臼井さんのエコツアーがスタート。
シャロムの敷地内に配置されている、知恵と工夫、大地への愛情がたくさん詰まったパーマカルチャーの実践例を見せていただきました。
落ち葉を利用したコンポストトイレは、微生物と森の力を借りたもので、水洗トイレには必須の下水道工事、電気工事、処理施設も必要ありませんし、水ビジネスが盛んになり今や貴重な資源となっている水を無駄に使うこともありません。
そして、コブハウス。土を固めて造られた竪穴式住居のような家で、子供達の遊び場にぴったりな愛らしい形です。他にもセルフビルドの家、キーホールガーデン、ストローベールハウスなどがありましたが、それらはシャロムが持続可能な暮らしを目指し、実践する中で取り組んでこられたものとのことでした。
エコツアーの後は自然農塾本編へ。
シャロムから車で15分程の所にある田んぼで苗代作りと種まき。
いよいよ野良仕事の実践!と思いきや、まずは田んぼの観察。田んぼをよく見てみると、様々な草が生えていました。同じ敷地内でも陽が良くあたる場所と影になる場所、水の通り道など環境は様々で、それぞれの場所に適した草が生えているとのこと。マメ科のレンゲは、根に寄生する根瘤菌が窒素を固定して養分をつくり、地力を高めてくれるという非常に重要な役割を担っています。ナズナは土が良い状態にあるというバロメーター。
●豆知識
・1反=300坪=10a=1000㎡
・1俵=60kg
・1反用の苗代=4m×12m
・1枚の田に生える草の根の量は一定
→草が多ければ収量が減り、米が多ければ地力が落ちるのでそのバランスが大切。
●苗代の準備
種のベッドとなる苗代は、昨年の塾生さん達が準備してくれたもの。覆っていた藁を剥がして苗代に指を入れると、すっと入っていくほど柔らかい土でした。
① 苗代と畦の間に溝を切る・・・ネズミ除けと水切りの為
② 畦の草を刈り、日陰であまり草の生育が良くない所へ置いておく
③ 有機物を取り除く
米ぬかや藁などが残っているとそれらが発酵してしまう為、丁寧に取り除く。“下のもの(根)は土の中に 上のもの(葉)は土の上に”が原則。更に鍬で表土を削り、草の種を取り除く。
④ 水糸を張り、それに沿ってスコップを入れて長方形の苗代を形作る
⑤ 土の中の根切り
鍬を振り子のように振り、刃先8cm程を浅く入れて根を切る。根が残っていると種が負ける為、耕さない農法では大切な仕事。竹内さんは簡単そうにやられていましたが、参加者がやってみるとなかなか上手くいかず四苦八苦していました。
⑥ 表土をならす
鍬で表面を平らにならしていく。一方向に鍬を動かすのではなく、右から来たら次は左からというようにバランスよく動かすとより均等にならすことができるとのこと。
⑦ 表面の藁などを取りつつ手で平らにしていく
⑧ 表面の沈圧
鍬の頭で表面を押さえつけるようにして沈圧し、法面も同様に整地。ここで手間をかけるかどうかで発芽率が変わってくる、ということで竹内さんもぐっさんも苗代に顔を近づけて高低差が無いか、凹凸が無いかを入念に確認しながら10分程時間をかけて丁寧に作っていました。
●種まき
用意された種は3種類あり、ハッピーヒル4:農林48号4:黒米2 の割合でまきました。
※自然農では、種をまくことを“(大地に)おろす”という。
① 種を等間隔にまく
指の間から1粒ずつ落としたら、種同士の間隔が1粒大になるよう手で1粒1粒離しながら良い間隔をとっていく。これがなかなか大変で、気分は米粒をついばむ雀。
② 種を苗代に固定
手で表面を叩いて種を固定させることで種と土が密着し、発芽率が高くなる。真下に叩くことが種をずれないようにするコツ。
③ 苗代に土を掛ける
周囲の土を掘り起こし、草の種の無さそうな深い所の土を持ってきて、手で揉んで土を細かくして掛けていく。掛ける土の厚みは種の2倍程。
④ ネズミ除けの燻炭をまく
⑤ 鍬で沈圧 ※足で沈圧する場合は、表面に凹凸をつくらないよう踵の無い靴で行う。
⑥ 苗代の保水の為、3cm程に刻んだ藁をまんべんなく掛ける
⑦ 鍬で再度沈圧
⑧ 最初に苗代を覆っていた藁を苗代に敷く
⑨ 不織布で覆ってペグでしっかりと固定
種まき完了!お腹ペコペコ!これでおいしいシャロムのご飯が更においしく食べられます。
【ブランチ】
昨夜、人生初のマクロビ料理をいただいていたく感動した私。ブランチはまたもや感動メニューの品々でした!素材の良さはもちろん、その良さがしっかり伝わる味付けは是非毎日の食卓に取り入れたいものです。
そしてシャロムのアースデイイベントに出店する為、名古屋から来ていたお二方の手づくり五平餅が、しっかりと別腹を満たしてくれました。
【午後】
ブランチの後は畑で区画決めをして、夏野菜の植え付けと種まき。
どこに野菜を植えたらいいのか分からない程に草が繁茂した自然農の畑。まずは竹内さんから植え方と様々なアドバイスをいただきました。
●豆知識
・野菜の根は刃先の下にある。葉の広がり=根の広がり
・ヨモギ・セイタカアワダチソウ・・・出根性で繁殖力が強いので根から取る。
・ハコベ・・・虫の棲家になり土を肥やしてくれる。
・畑に草が無い場合は、ハコベを一株移植すると早く自然農に適した土になる。
・畝立ての時には、風の通り道も考慮し土や種が一箇所に集まらないようにする。
●じゃがいもの植え方
昨日半分に切った種イモは乾燥し、切り口を修復しようと内側にカールしていました。
・一発植え
種イモ2つ分程の深さまで鍬を入れて少し浮かせ、その隙間に種イモを置いて鍬を抜く。
そして何事もなかったかのように土を戻して完了。
・山型
① 草を少し開いて表土を出し、鎌で筋を入れるようにして土中の根切りをする
② 手で種イモ2つ分くらいの深さの穴を掘り、種イモを置く
③ 山型に土を盛って完了 ※草は掛けない
●その他の種のまき方
① 草をどけて、手で土を脇に寄せる
② 鎌で根を切る
③ 中心を少し凹ませるようにして土を左右に寄せる
④ 中心を沈圧して平らにする
⑤ 種を落とす
⑥ 種の2倍程の厚さに土をかぶせる
⑦ 沈圧・・・種と土を密着させることで水分を吸いやすくする ※鍬又は踵のない靴で行う
⑧ 草を薄めに掛けて完了
■間隔
ニンジン…0.5cm ゴボウ…1cm コマツナ・カブ…2cm シュンギク…0.5~1cm
ハツカダイコン…3cm
●ポット苗の植え方
① 草をどけて穴を掘る ※苗の表土と畑の表土の高さが揃う、又は苗が少し出るようにする
② 取り出した苗を穴の壁面に添えるように置く
③ 隙間に土を戻し、根本を上から押さえて畑に固定する
④ 表土部分に米ヌカを播いて完了・・・ヨトウムシやネキリムシなどは米ヌカを食べる
※植える前に水を吸わせておけば、畑に入れたときに周りの乾いた土と良くなじむので、植え付け後の水遣りは必要ない。
畑を覆っている少し草をどかすとニョロっと顔を出すミミズ。きっと豊かな生態系がつくられているのだろうと思っていたら、やっぱりありました。ネズミの穴にモグラの穴。それらを1つ1つかかと落としで潰していくのは数が多いだけになかなか大変でしたが、野菜の根を切ってしまうモグラ達がまたトンネルを作らないようにする重要な仕事とのこと。
草原だった畑も終わってみればそこかしこに野菜が鎮座し、なんとか畑らしくなりました。
今度来た時にはどんな表情になっているのかな?
野菜達はどれだけ大きくなっているのだろう?早くも来月が楽しみです。
自然農は自然に任せる農業ではなく、自然環境の状況と変化をよく観察して、野菜達が最大限に力を発揮できるように少しだけ手をかしてあげる、自然に寄り添う農業なのだと感じました。
竹内さん、ぐっさん、やっさん、そしておやつの差し入れをしてくださったゆうこさん、ありがとうございました。
2011月4月17日
村田燿子