ドミトリーに差し込む朝の光。昨夜までの深酒がたたり頭もまぶたも重たいけれど、お天道様にはかなわない。気持ちよく晴れた安曇野の朝。ぼんやりする頭で散歩へ出る。遠くの山並みを眺めながらブラブラと畑へ。ひんやりと吹く風が心地よい。
1ヶ月ぶりに訪れた畑はまるで別世界。ハコベ、ナズナといった冬草が可憐に花をつけ、畑一面を覆っていた。思わず感じるその美しさ。柔らかく優しい風景があった。自分の畝へ近寄ってみれば、草々に隠れるように、先月植えたキャベツやレタスを発見。種をおろしたカブ、ダイコン、シュンギクもちゃんと芽が出ていた。再び感じる小さな感動。
朝の時間を思い思いに過ごし、7時半に皆集まって田んぼへ。昨日からの畦塗りを仕上げにかかる。昨日盛ったドロは適度に水が抜けて固さがでてきていた。再び田に少し水を引き入れる。水路全体に水が回ったら、すでに盛ってある乾いたドロを湿らせるようにしながら、鍬やスコップでさらにドロを盛っていく。少し押さえつけるように、畦の上部と斜面部をタテにヨコに何度も何度も塗っていく。左官屋さん気分でなかなか楽しい。竹内さんの動きは滑らかで、所作が美しい。美しい動きは無駄がなく力みもない。腰の動き、重心の移動の仕方、山仕事と通じている事が多くおもしろい。
水路と畦の境が一番水漏れしやすいので、重点的にグーッと押さえながら塗りつける。水がよく抜けてしまう田はヒエが、反対に水が溜まり続ける田はコナギが優先しやすいとのこと。
畦塗りが仕上がれば大豆の種降ろし。畦の上部に鍬の角で三角形の穴を作り、そこに大豆を3粒ずつ入れていく。穴に土はかぶせず、刈った草を水につけ穴の上に厚めに敷いてやる。穴の中に充分水がたまるように。大豆は花が咲く時に水分を必要とし、畦に種を降ろせば、開花時期には田に水が入っているので丁度よいそうだ。適地適作。最後に皆で完成記念写真。
シャロムへ戻る前に耕す田畑を見学。やっぱり自然農の田畑の方が好きだなぁと感じた。とにかくこれから1年、それぞれの田畑の様子の違いを観察していこう。
シャロムへ戻ってブランチ。普段1日に4~5合食べる自分にとっては、待ちに待ったシアワセの時間。今回もおいしいご飯にパンやパスタ、ありそうでなかったカレー味の切り干しなど、足るを知らぬ我が胃袋も満腹満足のメニュー。ご馳走様でした。
食事の後は少しゆっくり過ごし、いよいよ畑の準備。竹内さんに改めて苗の紹介と色々な話をして頂く。今回もタメになる話がたくさんでメモを取る手が忙しい。
■メモ箇条書き(1日目の講座の内容も含む)
・結球するものは自然界では「奇形」。
→中が光合成できないので、白くなったり柔らかくなったり。
・ミニトマトは野生に近い。
→大玉トマトに比べ育てやすい
・自然農の畑は年を追う毎に植生が変わってくる。
a. スギナ・ヨモギ・セイタカアワダチソウ
b. ツユクサ・シロザ
c. オドリコソウ・オオイヌノフグリ・ハコベ
→”a”は荒地にあるような根のしっかりしたものが多く、”c”に向かうにつれ、段々食べ
られる草が増え、土壌も肥沃になっていく。シャロムの畑は肥沃そのもの。
・春秋野菜(アブラナ科)⇔夏野菜(ウリ・ナス科)の傾向があるので、輪作・混作で連作障害
対策を。
・大きい苗(老化苗)は自然農の向かない。
→年をとった状態なので、肥料・農薬なしの環境に適応しづらい。ポットの中で出た根は
植えるとリセットされて再度新しく出してくるので余計に悪い。「若苗」が自然農向き。
・「トマト×ニラ」、「カボチャ×ネギ」は良い組み合わせ。ただ、ニラは毎年出てくるので注意。
・パプリカ、ピーマン、シシトウ、トウガラシは全て同じもの。 だから混植すると交配し、辛い
ものが優先的に遺伝される。
・ナスはインドの河川敷出身なので、水と養分が他のナス科の野菜よりも必要。
・モロコシは受粉不良を防ぐため10本以上植えた方がよい。 ヒゲの1本1本が粒1つずつに
繋がっており、そこだけ受粉しなければ歯抜け状態に。イネ科なので、他の野菜が不要な
養分を吸収して生長する。因みに、収穫したものを横向きにすると半日で糖度が落ちる!
・オクラとゴボウは互いに根を深く張るので、一緒に植えると競合してしまう。
・ウリ科は2苗セットで植えないと受粉しない。
先月、村田家は2人とも急遽畝を増やしたので畑の計画を立て直したが、種苗代と家計とのにらめっこの末、再び大幅に計画変更。カッと照りつける太陽の下、いざ畑へ。まずは植えてある野菜の手入れの仕方と、今回植える苗の植え方のポイントを竹内さんに説明して頂いた。
■前回植えたもの
『キャベツ&レタス』
・・・周囲の草を刈り、葉が大きく横に伸ばせるように少し株元から離して敷いておく。『ゴボウ』
・・・間引く芽の選び方は、現段階ではV字に葉を伸ばし根の張り方がおとなしいものを。
もう少し大きくなれば横にガバッと葉を広げて暴れているものを。
『カブ、ダイコン、シュンギク』
・・・ゴボウと同様に成長の悪いものを間引き、指2本分くらいの間隔になるように配置。
『ジャガイモ』・・・植えたものはまだ芽が出ていなかった・・・。
命はそのままにしておけば、それ自身が精一杯生きようとする。芽生えたばかり、植えたばかりのまだひ弱な命を甘やかすことなく、生きる妨げになるものだけを除いてやる心配り。繊細な仕事が野菜への愛おしさを与えてくれた。
■今回植えるもの
・「ウリ科×ネギ」、「ナス科×ネギ(ニラの方がよいが毎年出てくるのでネギでよし)」はよい組
み合わせ。
・苗の植え方は前回と同じ。草を根と葉の付け根で刈り、ポットが入るくらいの穴(深さはポ
ットを置いた時にその上部が地面と同じくらい)を掘り、穴の横面にしっかりと密着させて
土を戻ししっかり押さえる。そして刈った草を敷いておく。
・ウリ科は25℃以上になると夏バテをするので株下に草を敷き、
ナス科は地温を上げてやる必要があるので、株下から少し離して敷いておく。
・現在畑を覆っているのはハコベ、ナズナといった冬草達。それらを刈れば刈るほど夏草が
早く成長するので、植える野菜達と競合する。畑を見、状況に合わせた手入れを。
・カボチャとネギを組み合わせて植える場合、カボチャ苗の下部にネギをナナメに差し込む
ようにして植える。
・サツマイモは高畝にし、台形に形を整えて鍬で鎮圧。畝の上に棒を北側から南側に向け
てナナメに差し、それを抜きながら苗を差し込む。葉が3枚程度は地上に出るように。
足でグッと踏んで株下に草を敷き水をさす。
・エダマメは水を吸うと2倍に膨れるため、豆二つ分くらいの深さの穴を開け、3粒ずつ降ろ
し土をかけたら軽くトントンと押さえ草を敷く。
・サトイモは土をやや深めに掘り、掘った土を北側に盛っておく。芽出しした種芋の芽を上
にして置き、イモ1つ分の土をかける(ややくぼ地状になる)。地温を上げ穴に水がたまる
ようにするため、草は穴の周囲に敷きイモの真上はあけておく。
・キビは芽が他の草々と見分けがつかないので、1穴に10粒ほど降ろし、その場所に目印
を立てておく。
今回自分はスイートコーン、カボチャ×ネギ、エダマメ、サツマイモ、キビを植えた。5月とは思えないほどの日差しの中、ジワッと汗ばみながらの野良仕事。時折吹き抜ける風がこの上なく心地よい。耳に聞こえるのは鍬の音、鎌の音、風が草を揺らし、仲間の声がそれに重なる。えも言われぬ幸せが沁み出し嬉しく楽しくなった。
次回はこの畑を舞台にどんな営みが見られるのだろう。命が巡る畑と、この豊かな時間を共有できる仲間に会いに、また来月も安曇野を訪れよう。
2011.5.15
村田(優)