7月の安曇野自然農塾で自然農法センターの畑を訪れてから、次は田んぼも見たい!と思っていた所へAzumino自給農スクールとの合同見学会が開催されるとの告知を頂き、小躍りしながら出掛けていきました。
E圃場
試験内容:有機物の発酵と水稲の生育、雑草の発生の関係
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・品種:コシヒカリ
・左:5/16田植え+翌日ボカシ
・右:6/3 田植え+翌日ボカシ
・1:10/16耕耘+稲わら 4/11耕耘 5/9耕耘+油かす
・2:4/11 耕耘+稲わら 5/9耕耘+油かす
・3:5/9 耕耘+稲わら+油かす
・4:5/9 耕耘+稲わら堆肥+油かす
この試験の経過より・・・
■投入した稲わらなどの有機物が田植え時に未分解のままだと雑草抑制効果は劣る
■有機物を投入する場合は大苗を遅植えすると雑草を抑制する点において効果的
A2圃場
試験内容:自農センターが開発した水稲品種「はたはったん」の安定栽培
↑ここから 左:はたはったん
右:コシヒカリ
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60株/坪
4.4本/株
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70本/坪
3.6本/株
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60株/坪
4.4本/株
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葉同士が触れるか触れないかの 絶妙な密度管理がポイント |
・6/6田植え
・左(灰色):はたはったん (若干、背丈が低い)
・右(白色):コシヒカリ
・上段:植栽密度
・下段:植付本数
この試験経過より・・・
■植付本数を密(24株/㎡)にすることでコシヒカリより
㎡籾数が多く、収量を高めることができる
■稲わらを腐熟させる栽培方法が適していて、
コシヒカリより良質で収量が高まった
■稲の葉はソーラーパネル。植付密度を適正にすると
上手に雑草を抑えることができる
*はたはったんの特徴・・・コシヒカリに比べて、穂数がやや少なく粒数が多い
A3圃場
試験内容:はたはったんとコシヒカリの少肥条件での実証展示と種子生産
左:2001年から無施肥のはたはったん
6/5田植え(70株/坪)
7俵の収穫実績
植付時期や密度、稲の品種、大きさ、有機物の発酵具合など、様々な要因が関係し合う様子はとても複雑で、ともするといつも食べているお米は偶然の産物なのでは!?と思えてしまうほどでした。ですが、稲にとっての快適な環境条件、雑草にとっての快適な環境条件を知った上でよく見てみると、全てのことに結果と原因があり、その一つ一つの積み重ねがお米に繋がっていることがよく分かりました。
薄曇りの天気のおかげで寒くも暑くもなく、爽やかな風で稲がサワサワと気持ち良さそうに揺れていました。その静かな圃場に時々、新たな発見や衝撃的な事実を知ってしまったぐっさんの悲痛な叫びがこだまするのでした。
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稲の健康診断
田んぼの見学から帰ってきたら、お次は玄関前で稲の解体ショー。
田んぼからスッポリと抜いてきた稲の葉を、メスを手にした三木さんが一枚一枚はがしていきました。
左:生育良好 右:病気持ち
※ごめんなさい!少しぼけていますが、
左の方が太くて大きかったです
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解体された葉っぱ達 下から1週目、2週目、3週目、4週目 |
茎の中には稲穂の赤ちゃん |
稲を解体して何が見えるのだろう?と思っていたのですが、稲の葉は7日毎に新しいものが出てくる為、稲の体調の履歴が分かるそうです!稲の健康診断ですね。これは目から鱗でした。
健康な稲とは・・・
*葉は広めで先が垂れずに上を向いている(垂れているものは栄養過多で、病気の原因になる)
*茎が太く揃っている
*根は白~茶褐色(黒いものはガス障害)
稲の一生
少しわかりづらいですが、稲の一生を図解してみました。
● ---------------- 栄養生長期 ---------------- ● ------ 生殖生長期 ------ ●
①分けつ期・・・穂の数が決まる
②幼穂形成期(ようすいけいせいき)・・・穂当たりの籾数が決まる
・この①、②の時期の栄養状態次第でお米の入れ物としての全体のキャパシティが決まる
③登熟期(とうじゅくき)・・・籾の中にお米が入るかどうかが決まる
・登熟期は健康維持をする時期
栄養生長期・・・土から栄養を得て稲全体を大きくする時期
生殖生長期・・・穂をつくる準備時期
※出穂(しゅっすい)・・・茎の半分が穂を出した状態のこと
育苗
・30℃の温度で短期間で行う
・育苗中に最も多い病気はカビで、27℃で発生。30℃以上だと細菌が発生しやすくなる。
・昼夜の温度差を小さくして、体力のある苗を育てる。温度差が大きいと夏バテのようになり、体力を消耗して弱る。
■種播きの時期を遅らせることで昼夜の温度差の問題をクリアできる。
田植え
・草が多い田んぼでは、植え付け本数を増やすことで雑草を抑えられる
■稲同士の葉が触れるか触れないか程度の密度管理をすると、田面を稲の葉で覆うことができる為、その下の雑草へは日光が当たらない。
・5月植え・・・温度の高い時が長い為、雑草がダラダラといつまでも出てくる
・6月植え・・・2回程度の除草で雑草を抑えられる
出穂
*1株=10~20穂
*1穂=80~100粒
*茶碗並盛り1杯=3000~4000粒(3穂分)
*自然農では1株=1000~1500粒が平均
*1㎡に300~350本の茎数が1つの目標
→肥えた土、分けつしやすい品種は植え付け密度を低くして植えてもOK
以上は目安。
・土壌の栄養分は、霜の終わり(安曇野:4月後半)~霜の出る前(安曇野:10月後半)の間に出て、7月の下旬が最高期。この栄養が出る時期に稲の生長リズムを上手に乗せられるように品種、植え付け時期を選択する。
・5月に植えて分けつがそれほど進んでいない状態で早い時期に出穂すると、土壌の栄養を使い切ることなく栄養成長期を終えてしまう。そして、その余った栄養が雑草を育てることになる。
・米の粘りを左右するアミロースは、出穂が早く高温時期を長く過ごすと低下してしまう。出穂が遅すぎても同じ。
・”稲は土でとり、麦は肥料でとる” ・・・稲は70~80%を土からの栄養でまかない、麦は土の栄養分が少ない11月に種を播くので肥料が頼り。
収穫
・健康な稲・・・
*稲刈りの時期までに葉が3枚以上ある
*穂や葉の緑色が抜けてきれいな黄金色
*第1節間が全体の半分以上で、第1節で折ると穂が根の位置に達する
育土を制す者 草を制す
有機物
・秋に鋤きこんだワラなどの有機物が微生物のエサとなり、きれいに分解されるとそれらの栄養は余ることなく稲に吸収される。
→きれいに分解されないと、暖かい時期になってワラが急激に発酵し、稲は根を張れなくなる。そして余った栄養を養分として雑草が生えてしまう。
■ワラが分解される時期を為にも遅植えをすると良い。田植え~分けつ最高期の間にワラがしっかり分解されている土ほど稲の生長が良い。土壌の栄養最高期に稲がそれらの栄養を余すことなく食べられる体に生長しているかどうかが重要。
理想的な田んぼ
・上層はトロトロのクリーム状、下層はボソボソのスポンジ状の2層構造
→水はけの悪い田んぼはワラの分解が遅い為、植え付け時期を遅らせた方が良い。
■田植えまでに
①草が生えにくい状態の土になっている
②稲が育ちやすい状態の土になっている
これで全てが決まる。温度・水分・養分・微生物が分解の鍵。
雑草対策?いえいえ、育土対策!
・雑草対策(除草作業)が稲を弱らせてしまうこともる。
・稲をいかに健康に生長させるかを考えて育土をすれば、それが結果的に雑草対策となる。
→水に強い雑草もいれば弱い雑草もいる為、十把一からげにはいかない。状況を見て対策することが大事。
おいしいお米づくり5か条
■肥沃な土をつくる
■適正な品種選び
■良い苗の育成
■植え付け時期
■植え付け密度
****** ****** ******予定より1時間も延長された講義はとても濃密な内容でした。
ただ田んぼの経験を持たない私は、耳から入ってくるコトバを必死に書き留めるのが精一杯で、質問のある方は?と聞かれても何が分からないのかが分からない状態だったのが悔やまれます。
そして聞き逃した話や理解できなかった話も、一緒に参加した主人のメモを後で見よう♪・・・と思っていたら、メモの内容は全く同じ。知識・経験値が同レベルなら理解度も同じということをその時知りました。
(ということで、このレポートでは見学会のほんの一部の内容にしか触れられていません。詳しく知りたい!という方は竹内さんのブログへどうぞ~。)
それでも、地道な研究を続けていらっしゃる三木さんのお話は例え上手ということもあり、次々に解き明かしてくださる自然のしくみ、理に”なるほど!”を連発せずにはいられませんでした。素人目には野菜ほどは見た目の変化が無さそうだと思っていた稲も、ポイントを知った上でよく見ればたくさんの情報が得られ、そして健康状態が分かるのですね。
今は良く分からなくてちんぷんかんなことも、自分で田んぼを始めたときには”こういうことだったのかぁ!”と、かなりの時間差ですが合点できるのかもしれません。
そんな機会を与えてくださった竹内さん、ありがとうございました。
レポートを書いている本人の理解度が低い為、かなり伝わりにくい文章になってしまったかと思いますが、ここまでお読み頂きありがとうございました!
村田(燿)